放課後の子どもの安全に関する取組

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子どもたちの下校の安全が心配されるようになって久しい。鎌倉では授業中の学校の門の前に守衛が立ち、放課後は小学校の先生による下校指導がある。子どもたちは指導のもと方向別にひと固まりになって帰り、それを地域の人たちが見守るという活動がかれこれ15年以上も続いている。

始まりは2001年に起こった「池田小学校事件」。大阪府池田市にある大阪教育大附属池田小学校に刃物を持った暴漢が入り、放課後学校で過ごしていた子どもたちを無差別に殺傷したというもの。鎌倉の公立小学校では安全を配慮して直後から放課後下校指導をはじめ、登校から下校時間まで守衛が学校の前に立つようになった。放課後の子どもたちは学校で過ごすことなく直ちに下校する。その下校の通学路の見守り活動が15年以上たった今も鎌倉では継続されている。

anzen2交差点の近くやバス通りに地域の人たちが立ついわゆる「見守り隊」や、犬の散歩時間を登下校に合わせることで見守る「わんわんパトロール」、子ども110番の家など、見守り活動は地域の事情に合わせて様々。なかでも城廻ことぶき会の活動はユニークだ。学校周辺に人家の少ない場所があるというので、要所に会員が見守りに立ち、時に学童の登下校に合わせて一緒に歩くというもの。もともと高齢者の交流の会でグラウンドゴルフや美化パトロールなども行っていたが、地域の子どものためにさらに活動を広げ、高齢者だけではなく地域の子どもとのかかわりができ、多世代交流にもつながっている。「ムリなく自発的に行うのがコツ」と代表の鈴木さんは言う。この地域力って素直にスゴイ!と思う。

一方で幼稚園・保育園のお迎え、学童の保育や通院、家事やPTAや地域活動と母親の負担は増えている。働く母親の増加も見逃せない。鎌倉に限らず、下の子の幼稚園や保育園のお迎えと上の子の帰り時間との板挟み、仕事やPTA活動やおうちの用事などと子どもの保育との板挟みになって困惑する親子も少なくない。ムカシみたいに保護者や見守りがいなくても勝手に子どもだけで遊んで過ごすことが安全とは言えなくなっている昨今、下校してからでないと(一度、家に帰らないと)校庭では遊べない鎌倉の学童のために、放課後、独自の配慮をする小学校もあると聞いた。

44777c739b5934a15553763f72836155_ss市内のある学校ではPTA活動等で保護者が下校後時に家で子どもを迎えられない場合に関しては、学校に残ることができるのだという。学区が広く、校庭で遊ぼうと思ってもいったん家に帰ってからでは戻ってこられない子どもへの配慮がきっかけだったのだとか。もちろん利用に際しては保護者と担任の先生が連絡を取って確認し、他の子どもと区別をつけるための印をつける、親がお迎えに来るなどの細かな決まりがある。けれども放課後の子どもが先生たちがいる学校で過ごし、保護者の帰りを待てるのはありがたい配慮だ。この取り組みは市内の一部の小学校で独自に行われている。

池田小学校の事件以来、鎌倉では守衛が配置され、下校指導が行われている。この方式は安全への配慮は手厚いものの、放課後は子どもたちが学校で過ごすことができにくくなるという状況をも作った。放課後の先生と子どものなにげない会話や、子ども同士のおしゃべりの機会。縦割りのドッチボールや手つなぎ鬼。私たちが子どものころ当たり前に過ごした放課後の学校でのキラキラした時間は、今の鎌倉の子どもたちにはない。

65903bd23007ed791bbbb05bfde7a6bf_s来年度から「放課後かまくらっ子」という取り組みが始まる。こうした施策は子どもの家・子ども会館の指定管理による運営という視点でのみ語られることが多く、市外の業者が運営する予定のところも少なくない。運営者の選考では、運営の規模を大きく設定したり、地域の活動に経営的な実績を求めたり。せっかくの地域活動を評価して、共に育つ心意気が見えにくい。放課後の子どもたちの安全や健やかな育ちを目指している施策。それは大切だと思うが、結果的にその「方向や配慮」が利用者や地域には伝わりにくい。

子どもたちの通学を見守る地域力がある鎌倉なのだから、地域の人たちが放課後、校庭や体育館で過ごす子どもを見守る上手な仕組みができそうなのに。もったいないなあ、と思う。子どもをはぐくむ地域の力を行政も支え、もう一度、子どもも、施策も地域も、ともに育ってほしいと心から願った。

投稿者:CanCan

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